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2025/02/09 06:32 |
あれ…?
アップロードってどうやってしてたっけ?
なんか自分ルール作ってた気がするんだけど思い出せない…

思い出せないので、とりあえず最初の部分を続きにのせときます
………どうだったっけな
愛だった。三橋を形作る全てのもの、色素の薄い髪や、困った風に曲げられた眉や、形の良い耳や、柔らかな唇や、小振りな鼻や、焼けない肌や、努力の滲んだ掌や、大人しそうな指や、しなやかな腕や、頼れる肩や、薄い胸板や、滑らかな背中や、引き締まった腹や、健康的に伸びやかな足や、細いうなじや、羞恥に染まる頬や、快感に震える瞼や、濡れた睫毛や、俺を遠慮がちに見詰める瞳や、耳に馴染むその声や、目に見えない細胞のひとつひとつすら、三橋の全ての要因を余さず心から愛していた。愛だった。俺の中に溢れる感情の全て、喜びやら怒りやら哀しみやら楽しみやら苦しみやら愛おしさやらの起因はなにもかもが三橋で、俺は俺であるけれど、俺は三橋で形成されていると言っても過言ではない程だった。愛だった。二人で目覚めた朝の、カーテンの隙間から漏れる日の光や、慣れない手つきで煎れられた濃いめのコーヒーの味や香りや暖かさや立ち上る湯気。鳥の囀り。三橋が身じろいで鳴ったシーツのきぬ擦れ。三橋の温かさ。汗の匂い。舌触り。余さず全ては俺を満たし癒し温めた。愛だった。そこには確かに愛があって、それは互いの愛のシンクロが成せる幸福に満ちていた。
良く晴れた日のまばゆい朝日が差し込む幸せな寝室の甘さは筆舌に尽くしがたい程のこそばゆさがあって、生涯をかけて守り育て共にありたい喜びが頬を緩ませた。
互いの愛を確かめ合って、共に暮らし始めてから3年。愛情は日々育まれ、そしてその終わりはその影すらも見えはしなかった。
この愛に終わりはなく、命が尽きるまで自分の傍らに寄り添い、自分のなかに満ちているものだと、信じて疑う事は無かった。
そこに陰りが見えたのは、そこかしこにクリスマスの装飾が現れ出した11月の終わり頃だった。けれど、前兆や予兆や片鱗なんかはより前からあったのかもしれない、今思えば。
その日、三橋は俺に何も告げる事なく一日姿を消した。携帯は繋がらず、メールの返信もなく、行き先も告げず、書き置きすらなく、知り合いの誰にも一言もなく、丸一日、全くの行方知れずだった。けれど三橋は、翌日の朝普段通りに優しい声で俺を起こし、インスタントのコーヒーと、相変わらず焦げた目玉焼きと、ちぎっただけのサラダと、缶詰を使ったヨーグルトのフルーツサラダと、お気に入りのパン屋のパンを数種類用意して、俺が前日の事を尋ねようと口を開き、言葉を発するより前に、ごめんね、と呟いた。俺は半端に開いた口を閉じる他なく、何も聞く事が出来なくなり、以降いなくなったその日の事は、二人の間のタブーのように話題に上る事は無かった。
そして三橋が戻って来たその夜、真夜中にふと目覚めた時、三橋が黙って俺の顔を見詰めていた。眠れない?尋ねた俺に、田島君の顔を見ていたいだけだよ、と淡く微笑んだ三橋が答えた。その日以降、三橋が俺を見詰める回数が増えたように思えた。それは俺に甘酸っぱさを与え、無意識の内に俺を動かし、三橋の頬や鼻先や額や唇にキスを落とさせ、幸福に包まれながらの眠りに誘った。俺は馬鹿だった。
それから約一月後、クリスマスイブの夜、少し郊外にある三橋の好きなケーキ屋の、イチゴとサンタの乗った生クリームのケーキと、チョコレートガナッシュのケーキと、ニューヨークタイプのチーズケーキをそれぞれホールで購入し、口当たりが優しい三橋好みのスパークリングワインを2本用意して、サンタの帽子を被って帰宅した。
リビングの明かりは点いていた。
「三橋?」
俺の声に呼応するように設定時間を見誤ったエアコンのタイマーが作動して、耳障りな機械音と共に乾いた温風が部屋に流れた。立ち尽くす俺の耳が、風に動かされた紙の音を拾う。ゆっくりと振り返る。テーブルの上に、真っ白な紙が一枚置いてあった。手に取る。ペンを握り、紙に手を置き、長く逡巡した跡が、紙の右側を置いた手の形にヨレさせ、書く言葉を悩んだ形跡が、紙の上に複数残るペンの小さな点の跡に見て取れた。結局言葉が見付けられず、大きな空白のある真っ白な紙の右下に、少し歪んだ字で三橋廉とだけ書かれていた。
紙に水滴が二つ落ちた。気付けば、複数の水滴の乾いた跡が紙に残っていた。また紙に水滴が落ち、それはとめどなく零れた。俺は泣いていた。
部屋は無人だった。
三橋はいなくなった。
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2009/12/12 22:52 | Comments(0) | TrackBack() | 日常

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